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ボローニャの柱廊にて 15

「はじめに言葉ありき…ってか!?(前)」
(週刊上田 2004年12月18日掲載)
週刊上田に連載されたものを、許可を得て掲載しています。

 日曜日に近所を歩いていると、子ども達が仮装をして耕運機の引く山車に乗る、にぎやかなパレードに遭いました。なかには泡のスプレーを撒き散らしてはしゃぐ子も。春を呼ぶお祭り「カーニバル」でした。
スケッチ  さて、あと数日でボローニャを発たなくてはなりません。あっという間のアカデミアでの学生生活でしたが、二度と体験できない貴重な日々となりました。
 初めて大理石で大小2点の作品を約5週間かけて作り上げることができました。これは教えていただいた彫刻家・ヴェッキエッティ教授と、「ユキ」と呼ばれているイタリア語が堪能な福岡出身の青年に出会えたおかげです。ヴェッキエッティ先生のお宅(町の中心にある古い教会を自分で改造して、スタジオ兼住宅にしている)に二度も夕食に招待されたことも、忘れられない思い出です。
 一見こわもての先生は、若いときから大理石を中心に巨大な抽象の美しい作品をヨーロッパ中で作っています。教師として「学生は一人ひとり違うのだから、その人に合った指導をしなくてはいけない」と言っています。実際、それぞれの学生に時間をかけて話を聞き、的確に厳しくアドバイスしている、世にいそうでなかなかいない先生です。
 先生が来る日はいつも、学生が自分の作品模型を持ち列をなして待っています。わざわざ夕方、「さよなら」を言いにくる学生が少なからずいて驚きました。
 家庭では、2歳になる自分の子どものためにおもちゃや滑り台、さらには指人形の劇場まで自分で作ってしまい、さながら夢の公園みたいです。
 一般に日本でもどこでも、とくに男性は中年以降になると名誉や立場・権力を求めがちです。しかし彼は、学内外の要職を捨て、“生涯現役”と制作と教育に情熱を傾ける、優しくてユーモアのある、おしゃれでかっこいい男だと思いました。
 もちろん、世の中いろんな人がいるのが当然ですが、少しでもこういう男性が増えてほしいと願っているのですが。

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